いまだに新しい弦に交換するときは、ワクワクと心が躍る。
特にフラットトップのアコーステックギター(以下アコギ)
の弦を張り替えるときは格別だ。
しばらくぶりにケースから出したギターには
茶色く濁ったブロンズ弦が緩めた状態で張ってある。
ペグ(糸巻き)を弦がダルンダルンになるまで更に緩めて
ブリッジピンをペンチで抜き取りゲージのボールエンドをブリッジホールからはずす。
面倒な時はニッパーで弦を切断してしまうのだが
時間がゆっくり流れる日曜の午後ならそれほど慌てることもない。
ヘッドやボディに溜まった埃を拭きとり
必要ならばフレットに布に浸したオレンジオイルを塗り付ける。
張り替えられた弦は、エッジの立ったシャリ感のある音から
しばらく弾き続けると多少、落ち着いた丸みのある音に変わって
やがてはボヨ〜ンとしたヌルイ響きになり、いわゆる“弦が死んだ”状態になる。
まるっきり演奏が出来なくなるというわけではないが弾いていて気持ちが良くない。
そういえばギターを弾き始めた頃は、演奏中によく弦を切ってしまって交換していた。
弦の品質が上がったからなのか弾き方が変わったからなのかは定かでないが
最近ではアコギに関しては滅多にそういうことも無くなった。
エレキでは弦が細いせいで今でもたまに演奏中に切ってしまうことがある。
私の弾き方だと、だいたいひと月足らずで死んだ状態になって交換時期が来る。
弦を交換せずにそのままケースに収めて
別のギターを取り出してローテーションすることも多い。
こだわりというほどでもないがアコギの弦なら
ダダリオのphosohor Bronze/Lightが好きだ。
一時期、モーリスのエレアコに他メーカーのミディアム・ライトという
ライトより少し細いゲージを張って具合が良かったので
Guildにも同じように張ってみたら期待したほどの響きにならなかった。
おそらく重くデカイGuild F-50RNTはミディアム・ゲージぐらいで
ちょうど鳴らしきれるのだと思うのだが
そこまで太いゲージになると私にはテンションがきつすぎて
扱えなくなってしまう。
ギターと演奏者とゲージの相性が必ずしも一致するとは限らない。
決定的な不幸というほどでもないが、結婚後の思惑が違ってしまうようにだ。
ということで現在の落としどころとしてはダダリオのphosohor Bronze/Lightが
私にとって最良の選択ではあったのだが
ひと月ほどダダリオのEXPというライト・ゲージを試してみた。
最近、いろいろなメーカーから長持ちするということで
発売されている弦に被膜をコーティングしたもののひとつである。
被膜が弦を埃や錆から守り長持ちさせるという理屈らしいが
実際の使用感としては、残念ながら私が期待していたほどではなかった。
使用条件にもよるのだろうが、特別に音質が長持ちしたという印象は受けなかった。
勝手な予測でアレだが、おそらく弦の音質の変化は
ゲージの物性による張力の変化に負う部分が大きいのではないかと思う。
音の印象なんて主観的なものだから使い方や環境
それに測定の仕方によっては、もう少し効果が認められるのかもしれないが
買い置きのEXPを使い切ったら、もとのphosohor Bronzeに戻るつもりだ。
それでも張り替えたばかりのゲージは気分が高揚する。
チューニングを済ませ眠っていたギターを
徐々に目覚めさせていく、あの瞬間。
再びきらびやかな響きが取り戻され「嗚呼、これだった」と思い出す至福のひととき。
「これはアコギの特権ではなかろうか?」とさえ思う。
私は他の楽器に関しては、まるで疎いので断言はできないが
例えばサックスのリードを交換したときにも同じような感動があるのだろうか?
アコギの弦を張り替えるというのは
再生に立ち会う感覚に訴えてくる体験というか
何か生命の不思議を垣間見るかのような・・・
いや決して大げさに書いているのではなくて本当に、そんな感じなのだ。
まぁいい、誰が何と言おうとこれはギタリストの特権なのだ。
